とりあえず1日待つ

【「あの……。1つだけ、ご提案があります。今日1日は、何も決めず、何もしない、というのはどうでしょうか」】

これは大胆な発言です!今までこのような葬儀屋さんなど見たこともありません。
※と言っても、物語は、あくまでフィクションですが。

でも、現実にこのような提案をしてくる葬儀屋さんがあったら、よほど良心的か、さもなくば世間知らずな葬儀屋さんでしょうね。
葬儀屋さんだって、事前事業ではなく、仕事でやっているのです。
目の前にある仕事に対して、「1日待ってみてはいかがでしょうか?」というのは、ちょっと人が良すぎですよね。

現実に川島さんのようなお人好しな葬儀屋さんはいないでしょうが、 これはいかに今までの葬儀屋さんが、喪家にたいして葬儀を急かしていたかを示すことでもあります。
というのも、人は慌てると判断力が鈍るものです。それを利用して、悪徳な葬儀社は、より高いプランやコースへと 遺族を誘導するのです。

「ですから、ちょっと落ち着きましょう。
1日、待ってみて、それからいろいろなことを手配しましょう。」
という川島さんの提案は、実に理にかなった良心的な提案です
しかも、もしこれが葬儀でなくて、通常のビジネスならば、むしろ当たり前な 顧客優先主義ですよね。

【守は面食らった。父が亡くなってからまだ半日もたってないのに、すでにこんなに忙しいのだ。
1日の空白の時間を作ってしまったら、あとはどうなるのだろう。】

これが家族を亡くし、葬儀を目の前にしたご遺族の、真っ正直な気持ちでしょう。
しかし、実のところ、遺体を病院から搬送すれば、とくに他のことは慌てて準備する必要もないのです。

川島さんは言います。
【ドライアイスは1日もちます。
火葬場を予約するのは早いほうが良いですが、1日連絡をずらしたからといって永遠に火葬できないわけではありません。】

通常、ドライアイスさえあてておけば、遺体は1週間くらい、死後のままを保ちます。 また、亡くなったその日は、遺体を搬送した時のドライアイスの分がありますので、慌てて葬儀屋さんに何かしてもらう 必要はありません。

一刻も早く火葬をしたい、または、お正月やお盆をはさむなどの連休の問題があるのならば別ですが、たいていは いちにちふつか遅くなっても大丈夫なはずです。

しかも、慌てて葬儀をして失うものも大きいとなれば、なおさらです。

【葬儀の日程が決まらなければ遺影もまだ必要ないですし、誰にも連絡しなければ弔問客は来ず、花や供物も要りません。
葬儀代はそのうち下ろせます。何も決めなければ、何も進行する必要はなく、それによって誰も困りません】

ここでも、川島さんはバッサリといきます。
確かに、慌ただしい葬儀になるのは、「葬儀をやる」と決まった時からです。
ちょっと落ち着いてみて、「葬儀をやる」というのを一時保留してみるということですね。

そうすれば、何もかもが動かない、進まないことに気づきます。
これはちょっとした発見ですね。
しかも、それで誰かが困るかというと、誰も困らない、というわけですから、慌てて葬儀を行うことはありません。

1日待つことで得られる平穏


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